研究概要 |
金属イオンの選択輸送を行なう目的で、モノアザクラウンエーテルを含むポリカルボン酸型イオン交換膜を合成した。すなわち、ポリ(アクリロイルオキシ無水リンゴ酸)(AMA),ポリ(無水イタコン酸)(IA)及びIAとアクリロニトリル(AN)の共重合体にモノアザクラウンを反応させ、PANとの重量比1:9〜3:7のブレンド膜を合成した。適当な組成をもつ膜を介して、アルカリ側から酸側へのアルカリ金属イオンの能動輸送は、高い最大輸送率と適当な輸送速度を示すことが認められた。これは膜の酸側における疎水性とアルカリ側における親水性が輸送系に対して適度に保たれていることを示唆する。選択率は二種のアルカリ金属イオンの競争的輸送速度比で評価した。【K^+】/【Na^+】及び【Na^+】/【Li^+】の選択率は、(AMA)対照膜で1.2及び1.4,(IA)対照膜で1.6及び1.4であった。モノアザクラウンを含む(AMA)膜では1.6〜1.7及び1.5〜2.2と向上するのに対して、モノアザクラウンを含む(IA)膜では1.0〜1.8及び1.3〜1.8の範囲になることが認められた。N-ヒドロキシエチルモノアザクラウンを含む(AMA)膜の選択率は、モノアザクランを含む(AMA)膜のそれと同程度であった。輸送系の酸性側を中性の緩衝側に変えたとき、N-ヒドロキシエチルモノアザクラウンを含む(AMA)膜及び同じクラウンを含む(IA-AN)膜の【K^+】/【Na^+】選択率は、1.0〜1.3と低下する傾向が認められた。 結論として、モノアザクラウンエーテルを含むポリカルボン酸型イオン交換膜を介したアルカリ金属イオンの能動輸送における選択率は、低分子のモノアザクラウンエーテルを含む液膜を介した輸送における選択率より低いことが認められた。その理由は、クラウン環の空孔径に適合する金属イオンの膜内への取込みにおける促進効果が膜中の移動及び膜外への放出における抑制効果で相殺されるためと考察した。
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