研究概要 |
本研究は、ポリシロキサンの特性を、酸素選択透過機能に結びつけるため1.構造の明確なポリシロキサングラフトポリマーの合成法を確立する。2.ポリマーの構造と酸素透過機能の関連について、基本的理解を得る。3.ポリシロキサンの新しい機能を開拓する。の3点に重点を置いて検討し、ポリシロキサングラフトポリマーの構造制御による機能高分子設計の基本原理を明らかとすることを目的とした。 1.については、2-オリゴジメチルシロキサン置換アクリロニトリルの新合成法をはじめ、種々の構造のオリゴジメチルシロキサンを置換基とする、新しいスチレン型のモノマーの合成法を開発し、これらを用いて構造の明確なグラフトポリマーの合成法を確立した。これについては、Polym Comm.,26(5)133(1985),Polym J.18(3),237(1985),Tetrahadron Lett.,26(47),5385(1985)などに報告した。これらの合成において、購入した液クロをを有効に使用した。 2.については、気体(主に酸素と窒素)の透過が主として拡散により支配されることを明らかとし、Polym.J.,18(3) 237(1986)を中心として報告した。この知見によりポリマーの構造と気体透過機能の関連が明らかとなり、高い気体透過係数を持つ素材の分子設計が可能となった。 3.については、ポリシロキサンの表面析出機能を見い出し、これを表面での気体の浴解性の向上に結びつけ、新しい原理に基づく酸素選択透過膜の設計を可能とした。これについては、Polym.J.,18(3),243(1986)などに報告した。 以上のように本研究では、所期の目的を達成することができた。本研究で得た総合的知見は、高分子加工34(12),574(1985)や化学工業56(1987)に総説としてまとめた。ポリシロキサンは、エレクトロニクス材料としても重要であり、本研究の知見をこのように新しい分野に展開できると思っている。
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