研究概要 |
テトラヒドロフランの開環カチオンリビング重合, あるいはその重合体である末端に官能基を有するポリテトラヒドロフランを利用して, 種々の機能性エラストマーの合成が可能であることを実証した. テトラヒドロフランのリビングカチオン重合において, 分子量のコントロールと末端へのジメチルアミノ基の定量的な導入に成功した. また, オリゴマーの反応, いわゆる高分子反応において, 溶媒その他反応条件の制限が低分子有機反応の場合に比べてかなり厳しいとはいえ, 反応条件の探索により, 多様な化学修飾が可能であった. アイオネン型ポリ(オキシテトラメチレン)がテトラヒドロフラン鎖に基づく疎水性セグメントとイオン点による親水性セグメントを有する両親媒性ポリマーであることを溶液物性から明らかにし, 気体透過性で評価した. ビオローゲン単位を組み込んだポリ(オキシテトラメチレン)アイオネンの合成に成功し, フィトクロミズム, フォトメカニカルの挙動を実証した. これらアイオネンエラストマーはまた, 優秀な力学的特性を示し, 親水性をも有する新しい機能性エラストマーとして興味深い. ポリ(オキシテトラメチレン)セグメントにさらにポリオキシエチレン単位を導入したプレポリマーを合成し, これにより作製したセグメント化ポリウレタンウレアの生体適合性を, in vitroおよびin vivoの種々の試験, さらに補体系の活性化測定により明らかにした. 補体活性化まで含めたこれだけ広範囲の試験に適合した生体医用材料は他にあまり例を見ないと思われる. さらに, ここで得られたポリウレタンは優れた力学的特性を示しており, オキシテトラメチレンより成るポリマーの優秀性を詳細かつ全面的に解明できたのではないかと考えている. 残された課題として, 光応答性に関してはフォトメカニカル挙動のメカニズムの解明, 抗血栓性については機械的寿命の評価がある.
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