流動場の基礎方程式は、原変数系あるいは渦度、ベクトルポテンシャル系によって表わされ解析されてきた。混合対流場については強制対流場に浮力項を加えて解かれてきたが、圧力場の解に困難が伴った。一方渦度方程式系は閉空間に対しては有効だが、流入出のある問題が解けなかった。本研究では温度変数系においてスカラーポテンシャルを導入することにより流入出のある問題が解けるようにし、その応用範囲を広げ、その有効性について検討しようとするものである。まず二次元等温流において、従来の流れ関数のみを用いる方法と本法による方法で解き、両者が相関係数0.9969で一致することを見い出した。そこでこれを非等温二次元共存混合対流場(底加熱、右壁の一部冷却)に応用し、左下から流入右上から流出する解を出した。一方、これと同じ、幾何学的、温度境界条件を持つ水槽実験装置においてミルクをトレーサーとした可視化実験を行った。両者は浮力と慣性力の微妙なバランスにより与えられる底面からの立ち上り流の位置において一致し、本法の有効性が実験的に確かめられた。そこでさらに三次元対流場に拡張し、立方体空間の左右に設けた正方形流入出口からの流れの問題を例として解を求めることができた。さらに非等温流流入という非定常問題に応用し、各時刻においても安定な解が求められることがわかった。また蓄熱槽への応用として、立方体容器の上面近くから温水を入れ、下面近くより冷水を抜き出す問題を解いた。この結果、アルキメデス数Gr/【Re^2】の値に応じて、短絡流と蛇行流が存在することがわかった。
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