研究概要 |
コーヒー等の各種飲料,牛乳,肉汁,各種糖水溶液などの液状食品は噴霧乾燥により乾燥され粉末製品とされるが、その乾燥過程を解析するにはこれら液状食品の活量と拡散係数を知る必要がある。本研究ではこれら液状食品の活量と拡散係数を求め、噴霧乾燥での液滴の乾燥挙動を推算しようとする。これらの液状食品では拡散係数は水分濃度の減少に伴い減少しその変化は数桁に及ぶ。先ず収縮座標系拡散方程式で拡散係数に種々の濃度依存の関数形を与え数値解を求め、これにより積分平均拡散係数を乾燥速度及び中心濃度と平均濃度の比に関係づけた。この関係を用い拡散係数を濃度関数として算出する方法を導出した。次にこの方法を用い先ず液状食品の主要成分である糖類につき、グルコースから分子量の大きいデキストリンに到るまで平板等温乾燥実験により拡散係数を濃度及び温度の関数として求めた。また活量についても温度と濃度の関数として求めた。水分の充分多い希薄溶液では拡散係数はWilkeのDiffusion factorと分子量の関係で整理された。次に水分濃度の減少による拡散係数の変化を希薄水溶液での拡散係数で無次元化し固形成分に対する含水率の関数として糖の種類によらず一般的に表す式を求めた。拡散の活性化エネルギーも同様含水率の関数として求められた。糖以外の成分を含む液状食品に対しては噴霧乾燥に近い液滴の、乾燥実験によりその乾燥挙動への影響を検討した。代表的な蛋白質として牛血清アルブミン、多成分系食品としてスキムミルク、さらにモデル液状食品として糖、蛋白質および塩からなる混合液を用い滴乾燥実験を行った結果はSucroseからマルトデキストリンまでの理論乾燥曲線の範囲内に入る。乾燥の進行に伴う滴形状の複雑な収縮変形は乾燥を促進する側に働き、多くの液状食品での滴乾燥挙動はむしろSucroseの活量と拡散係数を用い液滴を球として計算される乾燥曲線により良く近似されることが結論された。
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