研究概要 |
ビタミンB-12(以下B-12と略す)の工業生産は糖質を主基質としてプロピオン酸細菌を嫌気培養し、菌体内に蓄積したB-12を抽出精製している。しかし、本菌はプロピオン酸、酢酸を培養液中に蓄積し、これらの酸は増殖を極度に阻害するため高濃度菌体を生産できない。そこで、これらの酸を資化し、かつ菌体内にB-12蓄積能を有する光合成細菌との相利共生系を確立して、これらの阻害物質を除去することにより、プロピオン酸細菌を高濃度に培養し光合成細菌と併せてB-12を生産するシステムの開発を目的として以下の成果を得たので概述する。 1.Propionibacterium shermaniiの生成物阻害の動力学的解析を行なった結果、酢酸よりもプロピオン酸が比増殖速度および増殖収率を著るしく低下させ、これが菌体生産性低下の主因であることを明らかにした。 2.光合成細菌の低級脂肪酸資化とB-12生産への光照射、通気の影響を検討した。光合成細菌は好気・暗,嫌気・明条件で生育可能であるが、高増殖速度および高B-12含量を得る方法として培養初期を十分な好気(DO≧3)とし、後期に微好気(DO=0,ORP=-200〜0mD)とする培養法を提案した。 3.光合成菌,Rhodopseudomonas sphaeroidesはグルコース共存下では低級脂肪酸よりもグルコースを優先的に資化するため混合培養は好ましくない。そこで透析膜リアクター(透過係数=0.48(glucose),0.55(propionate),0,82cm/h(acetate)を試作し、相利共生系を組み入れた透析培養を実施した。P.shermanii側をグルコース制限ケモスタット培養とし、R.sphaeroides側を好気・暗条件(DO=2〜3ppm)とした場合、良好な低級脂肪酸除去速度が得られた。その結果、P.shermaniiのB-12および菌体生産性は通常のケモスタット培養に比べ、各々2倍、3倍増加した。したがって、相利共生系を利用した本透析培養法はB-12生産向上に有効な手段である。
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