研究概要 |
イネの基本栄養成長性の遺伝子体系を確立することを最終目標に置き, 本研究を開始した. そのため, まず各種相互転座系統より基本栄養成長性早生を, 台中65号へ導入し, それらの系統を用いて出穂期の遺伝ならびに早生遺伝子の同座性検定を行なった. 19の台中65号の同質早生遺伝子系統の内, 18系統は先にTsai(1976)が見出した早生遺伝子Ef_1と同座の遺伝子であることが判った. 残る1系統はEf_1とは異なる早生遺伝子Ef_xを持つことが示唆されたが, 他のデータと矛盾するところもあり, さらに検討する必要がある. 台中65号の同質相互転座系統および同質遺伝子系統を用いて, 早生遺伝子の連鎖分析を行なった. その結果, Ef_1はこれまで西村の命名法(1961)による第9染色体に座乗すると考えられていたが(蔡 1973), それは誤りであり, Ef_1は第7染色体の遺伝子であることが明らかにされた. また, 同染色体の他の遺伝子と転座点との連鎖関係はpg1……7-8b……Rf_1……fg1……7-11……Ef_1……6-7……3-7……7-9……7-8a……2-7aであると推定された. さらに多くの早生遺伝子を明らかにするために, 北海道の在来イネ品種, 黒色稲-2を早生遺伝子の供与親とし, 台中65号の同質早生系統を反復親とする戻し交雑により, 19の極早生遺伝子家系を育成した. それらの極早生系統間で検定交雑を行ない, それぞれの系統の持つ第2の早生遺伝子の関係を調べた. その結果, 少なくとも2つの早生遺伝子が新たに同定された. 早生遺伝子系統は台中65号に比べ, 短い葯を持つものであった. 短葯品種は耐冷性が低いことから(鈴木 1982), 出穂期と葯長との遺伝子関係を調べた. その結果, 短葯形質は不完全優性遺伝子であることが明らかとなった. また, 早生遺伝子系統を台中65号との戻し交雑植物には早生・長葯を示す4つの組換固体と思われる植物を得た.
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