研究概要 |
(1)ヤナギ類を摂食するズグロアラメハムシはイヌコリ,コリ,マルバヤナギ葉に対しては食痕を残すものの連続的摂食はできない。イヌコリ葉の抽出物から本種の摂食抑制物質としてクロロゲン酸が明らかとなり、本物質がズグロアラメハムシの摂食を0.01Mで抑えること、上記のヤナギを摂食できるヤナギルリハムシに対しては同濃度で摂食刺激的に働くこと、また上記のヤナギには0.1M以上の濃度で存在することから、ズグロアラメハムシがこれらのヤナギ類を摂食できないのは高濃度のクロロゲン酸の存在によると考えられた。次に他の食性を持つ10種のハムシに対するクロロゲン酸の影響を調べた結果、6種のハムシに対し摂食抑制的に、2種のハムシには摂食刺激的に働いた。このようにクロロゲン酸に対する食植性ハムシ類の摂食反応が異ったことは本物質がハムシ類の寄主特異性に働く一物質となっていることを示している。 (2)食植性昆虫が寄主植物を摂食する際、最初に接触する化学的因子の一つは葉の表面ワックスであることから、植物葉表面に存在する普偏的なワックス成分である直鎖のアルカン、アルコールおよび酸に対する7種のハムシの摂食反応を調べた。その結果、7種のハムシのうち5種のハムシ、すぬわちウリハムシモドキが【C_(21)】〜【C_(25)】と【C_(30)】〜【C_(33)】のアルカンに、イチゴハムシが【C_(31)】〜【C_(35)】のアルカンおよび【C_(24)】〜【C_(26)】の酸に、ヤナギルリハムシが【C_(27)】〜【C_(30)】のアルカシに、サンゴジュハムシが【C_(27)】〜【C_(31)】のアルカンに、ヨモギハムシが【C_(22)】〜【C_(24)】のアルコールに刺激された。またガスクロ分析から、寄主植物に量的に多いワックス成分が各ハムシの摂食を刺激する傾向がみられた。このことはワックスは幅広く存在する物質であるにもかかわらず、それに対するハムシの反応が異なることから、ワックスはハムシ類の寄主特異性に働く可能性があると考えられる。
|