研究概要 |
一般の植物は高塩環境におかれると植物体内への塩類の集積や水分吸収能力の低下によって生育は低下し萎凋、枯死に至る。近年、海水利用,塩類集積土壌の耕地化などの見地から高塩類濃度が植物に及ぼす影響に関心が払われ、また耐塩性品種育種の必要が説かれている。しかし耐塩性という形質を与える機構は末だ明らかにされていない。そこで海浜,塩田跡地に自生しうる耐塩性を持った塩生植物の耐塩性機構を明らかにすることを目的として本研究を開始した。アカザ科の塩生植物ホソバノハマアカザを供試し水耕栽培を行い、初年度は以下の結果を得た。1.体内-価カチオン濃度を0.5から0.6Mに保つことで生育が促進され、その効果はNaCl,【Na_2】【SO_4】,【K_2】【SO_4】のいずれでも与えられること。2.50mM以上のNaCl,KClを与えた時には、NaCl区では500mMでも開花結実するのに対し、KCl区では250mMでも処理後2週間で枯死する。その原因は、ホソバノハマアカザの体内塩類濃度の調節がK塩に対しては十分働かず、K塩を過剰吸収してしまうためであること。第2年次はホソバノハマアカザ細胞内でのNa,K,Cl,ベタインの分布を検討するために、海水の塩分濃度の1/2に相当する250mMNaCl存在下で栽培した植物体緑葉よりプロトプラストを経由して液胞を調製しその溶質濃度を測定した。緑葉のNa,K,Cl濃度は500,35,168mMであった。単離したプロトプラスト、液胞の【^3H】【H_2】OスペースあたりのNa,K,Cl,ベタイン濃度は、それぞれ582,13.7,25.4,15.9mMと569,17.0,260,0.241mMであった。これらの比較からNa,Clはほとんど液胞に、一方ベタインはほとんど細胞質に存在することが示され、ホソバノハマアカザではNaClを液胞にとじこめる能力の高い事が耐塩性に深く関係していることが示された。
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