研究概要 |
微量重金属元素の中には、植物の必須元素として認められているものもあるが、一般に、それらの過剰は植物に有害である。本研究では、マンガン,亜鉛及びカドミウムの植物根における吸収と移行に対するカルシウムの影響、特に根内におけるこれら重金属元素の移行動態の解明を試みた。 そのため、マルチコンパートメント トランスポート ボックスを使用し、【^(54)Mn】,【^(65)Zn】あるいは【^(115m)Cd】で標識した処理溶液をオオムギ幼植物切断根の先端部に与え、カルシウム添加の有無の条件で植物根内に吸収されたマンガン,亜鉛及びカドミウムの根内における分布について検討した。 その結果、処理溶液へのカルシウムの添加はオオムギ切断根によるマンガン及び亜鉛の吸収と根内での移行を阻害することが明らかとなった。また、カルシウムによる阻害効果は吸収よりも移行に対して顕著であることが認められた。 他方、処理溶液へのカルシウムの添加はオオムギ切断根によるカドミウムの吸収を抑制したが、10μM以下の比較的低いカドミウム濃度の場合には、処理溶液のカルシウムが根内におけるカドミウムの移行を促進することが認められた。また処理溶液への2,4-dinitrophenol(10μM)の添加はカドミウムの根内移行に対するカルシウムの促進効果を著しく低下させた。chloramphenicolあるいはp-chloromercuribenzene sulphonic acidの添加はカドミウムの移行に対するカルシウムの促進効果を低下させることなく、むしろ増大させる傾向が認められた。なお、このようなカドミウムの根内移行に対するカルシウムの促進効果は幼植物育成時の培養条件によって大きく相違することが明らかになった。
|