研究課題/領域番号 |
60560090
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
応用生物化学・栄養化学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上原 悌次郎 京大, 工学部, 助教授 (90025982)
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研究期間 (年度) |
1985 – 1986
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研究課題ステータス |
完了 (1986年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1986年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
1985年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | Candida tropicalis / 二形性 / エタノールと二形性 / 二形性におけるイノシトールの役割 / 菌糸型形態形成 / 形態形成とイノシトール燐脂質代謝回転 / 形態形成とサイクリックAMP |
研究概要 |
真菌類には酵母型と菌糸型の二つの形態をとるものがある。この二形性の現象は最も簡単は形態形成と分化の表れとして興味を持たれているが生化学的機構は不明である。Candida tropicalis Pk233はエタノールによって菌糸型となり、イノシトール(In)が共存すると酵母型を保つ。またエタノールによる菌糸型増殖の初期にIn燐脂質の代謝回転が亢進する。菌糸型形態形成におけるIn燐脂質代謝回転の役割を一層明確にするために本研究を行い、次の成果を得た。 (1)カルシウムイオノフォア(A23187)は単独で菌糸型増殖をもたらし、合成ジアシルグリセロール(DG)である1-オレオイル-2-アセチルグリセロールはその効果を促進し、ホルボールエステル(12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート:TPA)は一層強い促進効果を示した。これによりIn燐脂質代謝回転が本菌の形態形成に本質的に重要であることが明らかになった。 (2)DGと【Ca^(2+)】によってそれぞれ活性化されるはずのプロテインキナーゼCと他の【Ca^(2+)】依存性プロテインキナーゼは活性自体が検出されず、また菌糸型増殖やIn燐脂質代謝回転に伴う特異的なタン白質の燐酸化も実証できなかったが、エタノール生育菌とA23187+TPA生育菌で特異的に増減するタン白質の分析から、菌糸型形態形成とIn燐脂質代謝回転に関与すると考えられるタン白質が数個検出された。 (3)エタノールによる菌糸型増殖の初期、すなわちIn燐脂質代謝回転が亢進する時期に、サイクリックAMPの菌体含量の顕著な上昇が認められ、これら二つの情報伝達系が菌の形態形成に相乗的に作用することが示唆された。 (4)菌糸型増殖をもたらす他の条件ではIn燐脂質に特異的な代謝回転の亢進は認められなかったが、Saccharomyces酵母でもエタノールによる菌糸型増殖が初めて見出されたことにより、形態形成におけるIn燐脂質代謝回転の普遍的重要性が示唆され、遺伝学的解析の可能性が生まれた。
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