研究概要 |
カゼインおよび乳清蛋白質に潜在的に含まれるオピオイドペプチドの単離,構造決定,化学合成ならびに生物学的活性に関する研究を行った。既知のオピオイドペプチド類似の配列としてTyr-X-Phe,およびTyr-X-Y-Pheという配列を乳蛋白質中に検索し、人乳および牛乳α-ラクトアルブミンに存在するTyr-Gly-Leu-Phe,ウシβラクトグロブリンに存在するTyr-Leu-Leu-Phe配列をもとに、相当するテトラペプチドアミドを化学合成したところ弱いオピオイドアゴニスト活性を示した。 一方、牛乳K-カゼインのペプシン水解物から、オピオイドレセプターに対する結合能を指標にして単離したペプチドは、Ser-Arg-Tyr-Pro-Ser-Tyr-【OCH_3】という構造を持つオピオイドアンタゴニストであり、モルモット回腸縦走筋標本の測定系でオピオイドアゴニストの作用と拮抗した。本ペプチドはK-カゼインの第33〜38番目に相当するペプチドであり、C末端は抽出過程でエステル化されたものである。本ペプチドをCaSoxin6と命名した。C末端を短縮したペプチドArg-Tyr-Pro-Ser-Tyr-【OCH_3】およびTyr-Pro-Ser-Tyr-【OCH_3】もアンタゴニスト活性を有しており、これらをCaSoxin5および4と命名した。C末端のメチルエステルはアンタゴニスト活性に重要でありこれを除くと活性は著しく低下した。エステルをTyrolに還元した場合やエチルおよびn-プロピルエステルにした場合も活性を示した。人乳K-カゼインに存在する相当配列Tyr-Pro-Tyr-Tyrを化学合成したところC末端遊離の場合も200μMでアンタゴニスト作用を示した。本ペプチドをメチルエステル化したところ、モルモット回腸測定系では2μMで有効であり、牛乳CaSoxin4より約10倍強力なオピオイドアンタゴニストとなった。本ペプチドをマウス脳室内投与した際にはモルフィセプチンの鎮痛作用と拮抗し、in vivoでも有効なオピオイドアンタゴニストとなった。本ペプチドをヒトCaSoxin4と命名した。
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