研究概要 |
1)Gluconobacter cerinus IFO 3267(type strain)を親株として、ニトロソグワニジン処理およびレプリカ法の組合せで15株のacidic pH-sensitive mutantを得た。分離された変異株はその生理生化学的性質である炭酸カルシウムの溶解性,乳酸および酢酸の二酸化炭素と水への酸化系の欠除,ユビキノン系,酢酸菌に特有な酸化還元酵素の活性ですべて親株と一致し、得られた変異株のすべては親株由来と考えられた。2)各pHを持つ培地で変異株を生育させた。すべての変異株は親株と異り、pH4.0で生育を示さなかった。変異株の中の6株はとくに感受性が高く、生育の最適pHを6.0に持ち、pH6.0を中心に酸性側,アルカリ性側にずれるに従って生育が悪くなった。3)すべての変異株の細胞表層脂質を親株のそれと比較検討した結果、リン脂質の構成に異常をもつ変異株が3株存在した。その中の1株、PSM-51はphosphatidylcholineが親株の25〜30%に、phosphatidylethanolamineが親株の2〜3倍に変化していた。他の2株では、全リン脂質が親株の60%に減少していた。4)Acidic pH-sensitive mutant,PSM-51を用いて、〔methyl-【^4C】〕methionineのメチル基のphosphatidylcholineへの取り込みを、in vivoおよびin vitroで検討した。In vivoでは、その活性は親株の60%であったが、in vitroでは、methyl transferaseの活性に親株との差は見出せなかった。5)親株と変異株のすべてについて、その細胞内のpHを5,5-dimethyloxazolidine-2,4-dioneを用いて測定した。親株では、外部環境のpH3.0〜7.0で、その細胞内pHは6.0〜6.5と一定に保たれていた。しかし、ほとんどの変異株では、外部環境のpH4.0ではその細胞内のpHは5.9以下であり、pH3.0では、ほとんどの変異株の細胞内pHは測定不能であった。これらの結果、変異株のacidic pH-sensitivityは細胞内pHの調節異常によると考えられた。
|