研究概要 |
Streptomyces azureusのpock形成に関する各種変異株を用いて、本菌のpock形成遺伝子の構造と機能を解析し、次の結果を得た。 1 少コピー性pSAIプラスミド(8.8Kb)を有する原株はpock非形成株(P.KC,PK100C)に対し1%以下のpock形成能を示すが、その多コピー化変異プラスミドpSA1.1(8.8Kb)を有するPK100とPK100a株のそれは100%に、PK10株では10〜50%に上昇した。pock形成性の原株にpSAIプラスミドの自律型と同時にその染色体への組込み配列を認め、本配列をpSA系プラスミドの起源と推測した。またPK10,PK100,PK100a株には多数の自律型が存在すること、pock非形成株には自律型は存在しないことを認め、pock形成には自律型が関与することを明らかにした。 2 pSA1.1を獲得した菌株では胞子形成と抗生物質生産が著しく抑制されることを認め、pSA1.1には二次代謝物の産生を抑制する機能のあることを示めした。またCysteineはこの抑制作用を解除することを見いだした。 3 pSA1.2(7.6Kb)はPK10株にpSA1.1と一緒に存在し、pSA1.1の2カ所(約1.2Kbと30〜40Kb)を欠損するプラスミドで、pock形成能を失っていた。この2カ所の欠損部位のいずれかまたは両方にpock形成をコードする領域があると推測した。またpSA/.2にはpSA1.1の複製能を抑え、さらにその細胞抑制作用を解除する機能があった。 4 pSA1.1及びpSA1.2と大腸菌のベクター(pBR322,pUC13)との組換え体を1カ所切断のBamHI,EcoRI,Hind【III】の部位で作成し、それらの活性を検した。pSA1.2のどの組換え体も容易に大腸菌中で増殖できた。しかし、pSA1.1ではBamHI部位で組換え体を作成した場合にのみ増殖したが、pock形成能を失った。これらの結果より、pSA1.2の欠損部位の近傍にあるBamHIを含む領域には、pock形成や細胞抑制作用をコードする遺伝子が存在していると推察した。
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