研究概要 |
自然環境下における植物のあるものは他の植物の生育を妨害することにより自己防衛(自己繁栄)を確立しているものが知られている。この自己防衛のための攻撃的手段が化学物質に由来する場合、その現象をアレロパシー(他感作用)と呼んでいる。代表者は、自然生態系の中でアレロパシー現象を示していると思われるユーカリ(Eucalyptus)およびハッカ(Mentha)属植物についてその原因物質の解明を行い、合成的手法によって構造活性相関を明らかにし、より高活性な化合物の探索を行った。これまでユーカリ属植物E.citriodora(レモンユーカリ)よりアレロケミクスとしてP-menthane-3,8-diols(cis体およびtrans体)を単離・同定し、各種の類縁体を合成して高等植物に対する生育阻害活性を比較検討したところ、diol中の2つの酸素原子間の距離が重要であることおよびエステル体にした場合に脂溶性アルキル基の長さが活性に大きく影響することが判った。ユーカリ種E.camaldulensisから活性の高いセスキテルペンアルコールを単離し、機器分析による構造解析の結果(+)-spathulenolであることが判明し、さらに構造と活性との関係を調べたところOH基は活性発現に必須であること、その位置やspathulenolの二重結合は活性発現に重要であることが明らかとなった。その他E.delegatensis,E.pauciflora,E.viminalisからはアレロケミクスとして、各種テルペンアルコール類および芳香族カルボン酸(2-furoic acid,D-β-phenyllactic acid,p-coumaric acid)などが単離・同定された。一方、スペアミント系ハッカ(Mentha spicata)主成分(-)-carvoneは土壌微生物によって代謝変換されてアレロパシーを発現しているものと考えられ、種々検討したところ、発芽阻害物質として新規活性物質(+)-bottrospicatolと命名したモノテルペンアルコールを単離・同定した。以上のアレロケミクスは、除草剤開発のリード化合物として、さらに検討する価値がある。
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