研究概要 |
豆臭に関与する化学物質は、ヘキサナールである事に注目し、以下に述べる様に、大豆におけるヘキサナール生成機構を明らかにした。 ヘキサナールの生成過程は、リノール酸(LA)からリポキシゲナーゼ(L-1,L-2,L-3:3種のイソ酵素を含む)の作用を受けてヒドロペルオキシド(HPO)が生成する第1のステップと、それがさらに開裂反応を経てヘキサナールを生成する第2のステップに分類される。通常の食品加工の条件下(PH中性附近)では、第1のステップ(過酸化反応)に関与するリポキシゲナーゼは、L-2イソ酵素で、その基質は中性脂質やリン脂質の様な結合型のLAでなく、遊離のLAであることを明らかにした。また、第2のステップ(開裂反応)は、従来から考えられている様な、非酵素的な反応でなく、リアーゼが関与する酵素的反応であることを明らかにした。本酵素は、L-2イソ酵素の過酸化反応でLAから生成する13-,9-HPOのうち、13-HPOにのみ特異的に作用してヘキサナールを生成させる開裂酵素(13-HPOリアーゼ)であることが判った。さらに、第1,第2の各ステップにおける酵素反応の速度論的な解析から、LAからヘキサナール生成に対する律速過程は、リポキシゲナーゼ(主にL-2)が関与する第1のステップであることを明らかにした。 また、リポキシゲナーゼが欠損した変異大豆(L-1欠,L-2欠,L-3欠,L-1,-3欠)の成分組成(アミノ酸分析,脂肪酸組成)およびタンパク質の機能特性を検討したところ、これらの変異大豆は、通常の大豆の差は認められず、食品素材として有用であることを明らかにした。 以上、要約して述べた様に、大豆加工工程における豆臭成分発生機構が解明されたことにより、豆臭発生の防止策を確立する上で、重要な情報を提供することが出来たと考えられる。
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