研究概要 |
本研究の目的はカツオ,マグロ類を対象として、精液保存による人工受精,交雜種仔,稚魚の飼育を行ない種々の生物学的知見をうることである。このため、60,61年に伊豆臨海実験所にて、定置網に入網したマルソウダ熟卵に南方海域で採集し、長期間保存したカツオ精液(60年実験315日間,61年689日間保存),キハダ精液(61年実験,1,075日間)により人工授精させ室内実験をした。 結果 1)60,61年度、供試魚マルソウダ不漁により熟卵が入手困難で、実験に多大の支障を来たした。しかし、60年、カツオ(♂)×マルソウダ(♀)のふ化実験を、また61年、キハダ(♂)×マルソウダ(♀)のふ化実験を行なうことが出来た。 2)カツオ×マルソウダの交配飼育実験からふ化後10日間の仔魚(全長5.229mm)を得、卵内発生,ふ化仔魚の形態の発達,挙動の観察記録を得、また、水温別ふ化実験,走行性実験等を行なうことが出来た。 3)2)の実験からふ化は20時間30分後に始まり、25時間後に終了した。ふ化の完了時間は既往のマルソウダのみのものとくらべ5時間30分早かった。24℃,26℃,28℃の階温実験では28℃で比較的高い生残を示した。 4)ふ化後10日目の交雜仔魚はマルソウダ仔魚と頭部の形に共通点が見られ、全体的にもカツオよりマルソウダに近い形態を示した。 5)交雜仔魚の走光性はマルソウダ仔魚と同様に背光性を示した。また、好適照度は1700LuX附近にあると見られた。 6)キハダ(♂)×マルソウダ(♂)の仔魚はふ化後46時間15分まで生存させ(全長3.80mm)形態の発達,挙動の観察を記録した。 7)交雜仔魚を稚魚まで飼育出来なかった理由は供試魚のマルソウダ熟卵が恵まれなかったこと,奇形によるふ化率が低いこと,60年度の実験にウージニウム症の発生により死魚を多く出したことなどがあげられる。
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