研究概要 |
ウナギ腎由来細胞株JEKとヤマメ腎由来細胞株YNKを用いて、ポリエチレングリコール(PEG)による細胞融合条件を検討した。PEGは分子量1000 600および400の3種を用い、濃度は60%,55%,50%,45%,40%の5水準で調べた。YNKの場合は、実験に使用した全ての濃度および分子量のPEGとの反応中もしくは洗浄中に、器面から剥離し、細胞融合は観察されなかった。JEKでは、60%PEG1000と応させた場合を除き、いずれのPEG溶液と反応させた場合でも細胞融合が観察された。60%PEG1000では反応中に細胞が器面より剥離してしまった。PEGの分子量と細胞融合効率との関係をみるとPEG400で最もよく、PEG1000および600よりも有意に高かった。また、それ以上の分子量のPEGでは細胞に対する毒性が強く細胞融合もあまり観察されなかった。一方、PEG濃度は50%の場合が最も高い細胞融合率がえられ、他のグループより有意に高かった(P 0.05)。また、多核巨細胞の出現率はPEG1000の場合に高い傾向を示し、PEG400ではあまり高くなく、ほとんどが2〜3核の細胞であった。 JEKは、単層で増殖する大型の上皮性の細胞と、線維芽細胞様の紡錘型の細胞からなっている。PEGにより高率に融合するのは上皮性の細胞であるが、プレーティングエフィシエンシーが悪く、クローニングは成功していない。本細胞株は15〜30℃で増殖可能であり、25〜30℃に増殖至適温度がある。コルヒチン処理による分裂中期の染色体数を調べたところ、36個の2倍体のものが多かった。JEKをエチルメタンスルフォネートで処理して突然変異誘起実験を行なっているが、チミジンキナーゼ欠損株はまだ得られていない。サケ科魚類腎臓のCa畜積細胞とJEKを、50%PEG400存在下で反応させると、低い確立で融合することを見出した。
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