研究概要 |
加熱魚肉の酸敗臭の発生要因である脂質酸化に関与する因子を明らかにする目的で、酸敗臭発生の魚種による相違を白身魚,中間色魚及び赤身魚について比較検討した。供試魚の普通肉及び血合肉を別々に挽き肉とし、100°C、30min加熱処理後約5°Cに6日間貯蔵し、貯蔵中におけるTBA値の変化を測定した。その結果、酸敗臭は次の順序で発生しやすかった。サンマ>マサバ>マイワシ>マアジ>トビウオ>ギンダラ>オヒョウ>アサバカレイ。次に水抽出したサバ肉のTBA値に及ぼす水抽出液の各画分の影響を調べた。その結果、TBA値の上昇を促進する因子は主として透析内液に含まれていることが判明した。すなわち、酸敗臭の発生には主としてheme色素が触媒として関与している可能性が示唆された。しかし、重金属イオンの可能性も否定できなかったので、両者についてさらに検討した。3回水抽出し、加熱したサバ挽き肉のTBA値が冷蔵中あまり上昇しなかったことから、これを脂質酸化触媒を含まない魚肉モデルとみなし、その脂質酸化に及ぼすMb,鉄イオン,EDTA,亜硝酸塩,アスコルビン酸塩などの影響を調べた。魚肉モデルに上記の化合物を添加し、100°C,15min加熱後約5°Cに貯蔵し、貯蔵中におけるTBA値の変化を測定した。その結果、1.metMb,Mb【O_2】は共にTBA値の上昇を促進する,2.EDTAはMbが促進するTBA値の上昇には全く影響しない,3.【Fe^(2+)】及び【Fe^(3+)】はTBA値の上昇を促進する,4.EDTAは【Fe^(2+)】及び【Fe^(3+)】が促進するTBA値の上昇を完全に抑制する,5.Mbが促進するTBA値の上昇は、亜硝酸塩とアスコルビン酸塩とによって著しく抑制される,などが判明した。そこで、サバ挽き肉について同様な試験を行った結果、加熱サバ肉の酸敗臭の発生には、heme色素に加え非heme鉄による脂質酸化促進機構も関与しているものと一応結論された。しかし、不明な点も多くなお今後の検討が必要である。
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