研究概要 |
飽和状態を出発点として土壌表面からの水分蒸発による乾燥によって表層付近に塩類を集積させた場合、表層の溶液保持レベルがpF1.9前後になると、集積層における集積パターンが変化することが実験的に確認されている。しかし、その原因や機構については明確な説明がなされていない。そこで本研究では、乾燥条件を変化させ塩類集積実験を行なうとともに、集積によって変化する供試体の乾燥特性や土壌内の溶液移動特性などの間接的なアプローチからの実験とによって塩類集積機構の解明に役立つ基礎データを得ようとした。その主な検討結果は以下のとおりである。 塩類集積曲線の変曲点(A点)は乾燥温度が高いほど少ない蒸発で生じ、蒸発強度に影響されるが、土壌溶液濃度の差は影響を及ぼさなかった。これらから集積塩類の挙動形式や移動媒体との関係が検討できる可能性が考えられたが、より確実なものとするためには今一歩明確な差として現象をとらえる工夫と技術が必要であると思われた。 土壌表層付近に集積した塩類はその形態と量とによって乾燥特性に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。溶液型の乾燥速度曲線は全過程で減率乾燥となり、その曲線は4本の直線と3個の変曲点であらわせた。また、その曲線は粘土含有量が多い供試土ほど高含水比側に位置し、乾燥温度が高い程縦長に、溶液濃度が高いほど扁平になることなどが認められた。 塩類集積過程の層別含水比曲線,乾燥段階別含水比分布曲線,層別乾燥速度曲線および層別含水比変化速度から土壌内の溶液移動への影響をみる試みを行った結果、それらの示す特徴と集積形態との関係が検討できる可能性が認められたが、普偏的な特性として位置づけるためには実験の精度とデータの蓄積が必要であると考えられた。
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