研究概要 |
開水路流れにおけるレイノルズ応力を解明するために、野外の農業用水路で流速変動成分の計測をおこなった。計測をおこなった開水路流れは、愛知県西三河地方を流れる矢作川より取水している明治用水路,岐阜県西濃地方を流れる根尾川から取水している真桑用水路,同じく中濃地方を流れる長良川から取水している各務用水路である。流速変動の計測システムとしては、小型回転式流速計,FV変換器,データレコーダ,モニター用のレコーダを使用した。また、計測データの校正には直流標準電圧電流発生器,発振器,ディジタルマルチメータ等を使用した。そして、アナログデータのディジタル変換には岐阜大学情報処理センターの電子計算機等を使用した。研究結果をまとめると下記の通りである。 1.小型回転式流速計の始動特性としての時定数は0.03〜0.05秒であって、方向特性は余弦関数によって十分近似することが出来る。 2.コレログラムを計算したところ、開水路の下層部の方が上層部よりもゆっくり減少しており、また、自己相関係数値が0になるラグタイムが遅い。積分時間スケールは下層部で約0.4秒,上層部で約0.1秒であった。 3.スペクトルの形状については、特定のエネルギーのピークは見られず、全体的に高周波数領域になると小さくなり、その勾配は約-1.3である。 4.レイノルズ応力の成分については、水面近傍においてはU´V´,U´W´,V´W´の3成分共にほぼ同程度の大きさであるが、U´W´は開水路の下層部ほど急激に大きくなり、水路底付近では水面近傍の10倍以上である。 5.レイノルズ応力の内部構造の一面を解析するために条件付抽出法を適用すると、第【I】象限と第【III】象限に存在する確率、また、第【II】象限と第【IV】象限に存在する確率はほぼ等しいが、常に同符号の積が存在する確率よりも異符号の積が存在する確率の方が高い。
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