研究概要 |
1.土壌の物性値のスケーリング 土壌の物性値の実測値をスケーリング係数によって無次元表示した値と代表値との残差平方和を最小にすることによってスケーリング係数を決定する方法を確立した。代表値を土壌水分(有効飽和度)の関数とした実験式によって推定する場合と、実験式を用いず実測値の平均値で表した場合の二つの方法を採用した。マトリックサクション,不飽和透水係数,土壌水分拡散係数に対して、これら二つの方法によるスケーリングの効果を比較,検討した。いずれの場合にも、スケーリングの効果は大きく、得られたスケーリング係数の値は、各特性値に対して、方法の違いによる違いはほとんどなかった。残差平方和は、どの特性値に対しても、実験式を用いない場合が実験式を用いる場合よりも小さく、スケーリングの精度がより良好であることを示した。実験式を用いない方法は、スケーリング無次元式内の係数の値を変えるだけで、異なる特性値に対してスケーリングを容易に行えるので、非常に有用であると結論づけられた。 2.土壌の物性値のクリッジング 限られた数の実測値を用いて未測定点の値を推定するクリッジング法の確立を試みた。まず、バリオグラムを観測点間距離の線形関数として決定した。推定精度が最良になるような隣接点距離を選択し、各点の値をクリッジングによって推定するコンピュータマルゴリズムを確立した。砂丘地や干拓地における粒度組成,土壌溶液のイオン濃度,土中塩分・PHなどの特性値を対象として、それらの空間変動性を等値線図として表した。その結果、クリッジング推定値を用いた等値線図は、実測値だけから得た線形内挿法による等値線図よりもはるかに明瞭であり、特性値の場所的な分布の特徴をよく示した。また、等値線図の分布が類似している各特性値間における線形予測式を用いて、一つの特性値から他の特性値を推定できる可能性が認められた。
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