研究概要 |
中・四国、九州地方の戦後竣工した干拓堤防を対象としてその実状を明らかにし、干拓堤防が他の土構造物とはかなり異なったタイプの構造物であることを明らかにした。すなわち、干拓堤防はその基礎地盤の特性、施工方法、築堤場所等から、沈下と老朽化は避けられず、改修、補強を行っている。特に九州地方では50工区のうち45工区は何らかの改修を行っている。干拓堤防が有する宿命の如くである。また、災害復旧工事に関しては、その原因は台風によるものが大半であり、本研究の対象である地震による被災は一工区も該当しなかった。しかしながら、調査の対象期間に大地震が発生していないからであり、将来予測される当該地点の地震動を考慮に入れた解析を行う必要がある。したがって、各工区の地震危険度解析を行った。まず、各工区の基礎地盤の種類分を行い、また、有史以来の被害地震を用いて、建設省土木試験所のアテニュエイション公式を適用して解析を行った。干拓堤防の耐用年数は100年とされているので、各工区の100年期待値を求めた。 次に、モデル地盤(水位,粒径,単位重量,N値)を設定して、入力地震加速度を100ガルとして液状化解析を行った。この結果を用いて、各工区の標準断面,水位,地震動の100年期待値等から液状化安全率を算定してみた。この結果、一部の工区で安全率が1.0を割るところもあったが、その深度も深いこと、実験の地盤には細粒土がかなり含まれること等から、100年期待値の地震動に対しては安全であろうと考えられた。また、土質柱状図の比較的よく揃っている工区については実際に即した液状化安全率を算定したが、液状化に対しては十分安全であることがわかった。 干拓堤防は十分な耐震設計がなされていなかったのであるから、補強工事等を行う際には常に地震時の安全性についても検討を行う必要がある。
|