研究概要 |
本研究の目的は異種動物間のキメラ胚を作成し、初期胚の相互認識とその発生能力により動物間の類縁性を実験発生学的に解析することである。実験には3〜6ケ月齢のウィスター系ラット、ICR系マウスおよびゴールデンハムスターを用いた。それぞれの動物から得られた胚(マウス:8〜16細胞期,ラット:8〜16細胞期,ハムスター:8細胞期)の透明帯は0.3%プロナーゼ添加倍養液処理によって除去された。異種および異属間胚の集合は0.3%フィトヘマグルチニンP添加培養液中で行われた。異種間の胚の集合は、マウス〓ラット,マウス〓ハムスター,ラット〓ハムスター間において行われた。集合胚は牛血清アルブミン含有ダルベッコ修正液で一回洗い、流動パラフィンで覆われた0.3%牛血清アルブミン含有ダルベッコ修正培養液の小滴に移した。培養は、37℃・湿度100%,5%CO2と95%空気混合気相中で48時間行った。その結果、同種内集合胚の胚盤胞への発生率は、マウス間では46/50(92.0%),ラット間では51/54(44.4%)と高かったが、ハムスター間では0/46(0%)を示し、キメラ胚盤胞への発生は認められなかった。一方、マウスとラット間の集合胚のキメラ胚盤胞への発生率は43/53(81.1%)を示した。しかし、マウスとハムスター間,ラットとハムスター間の集合胚のキメラ胚盤胞への発生率は、それぞれ1/33(3.0%),0/21(0%)を示し、マウスとラット間の集合胚の発生率に比べて、極めて低い値を示した。これらの結果から次のことが考えられた。1.たとえ属や科が異なる動物間であっても発生の初期にキメラ胚盤胞を形成し得ることは、これらの動物の初期胚は自己認識機能を確立していないことを示していること。2.同種内,異属間,異科間の順で、集合胚の胚盤胞への発生率が低下することは、系統発生学的な違いによる可能性も否定できない。
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