研究概要 |
この研究は鶏糖代謝恒常性における腎の役割を、肝の代謝機能と比較しながら、臓器水準で明らかにすることを目的とする。 1.鶏腎灌流法の確立 物質代謝は細胞質とミトコンドリア(MiT)の両区画にまたがる反応でエネルギー水準によって大きく影響される。腎組織の十分な酸素化と良好な腎機能を維持する灌流液の流量と門脈灌流と動脈灌流で組織ATP量と酸素消費量を示標に検討し、5ml/min/g組織の流量を確立した。(第99,101,103回日本獣医学会) 2.鶏腎糖新生調節の検討 (1)肝と腎糖新生の比較 糖新生律速酵素phosphoenolpyruvatecarboxykinase(PEP-CK)は鶏肝でMiTに局在するのに対し、鶏腎ではMiTと細胞質の両方に分布する。この分布差により、環元基質乳酸は肝で、酸化基質ピルビン酸は腎で効率よく糖に転換されることを報告した。(第99回日本獣医学会) (2)腎における糖新生調節 腎糖新生におけるMiTと細胞質PEP-CK反応の調節について検討した。細胞質のPEP-CKのみを阻害するキノリン酸の処置は乳酸。ピルビン酸からの糖新生を抑制するが、リンゴ酸、コハク酸や、α-ケトグルタル酸からの糖新生を抑制しなかった。(第101回日本獣医学会) (3)腎動脈と腎門脈灌流における糖代謝の特性 鶏腎に流入する血管は動脈と門脈で、動脈は皮質と髄質を門脈は皮質のみを灌流する。両灌流系を用いて、皮質は糖新生の、髄質は解糖の機能を持つことを明らかにした。さらに尿細管腔における基質再吸収と糖新生の関係を明らかにした。(第103回日本獣医学会)
|