研究概要 |
マウス及びニワトリの肢芽を材料に、形態計測及び組織化学を用いて、肢の正常及び異常形態形成における外胚葉性頂堤(AER)の発達,表皮下間葉細胞突起の網目(CPM)の密度,表皮下細胞間隙(SEECS)の広さ,フィブロネクチン及びラミニンの分布を調べた。マウスでは、AERのよく発達している胎齢10.5〜11.5日に限って、AER部では肢芽の背側部や腹側部に比べてCPM密度の低下とSEECSの拡大が認められた。CPM,CEECSの状態は、AERの発達や間葉細胞の増殖制御に関係しているものと考えられる。ニワトリ肢芽ではAER直下にフィブロネクチンの集積が見られたが、マウスではこのような所見はなかった。ラミニンの分布にもAER下とその他の表皮下で差は見られず、これらの細胞外基質はAER特有の機能と直接の関係はないように思われる。マウス,ニワトリとも、間葉凝集の初期にフィブロネクチンの分布が増加する所見が得られた。しかし、この結果はフィブロネクチンに混在するテナスチンによる可能性があり、再検討を要する。胎齢10.5日のマウス胚子に母体を介して5-フルオロウラシル(5-FU),ビタミンA(VA),メトキシ酢酸(MAA)を、また、孵卵3日のニワトリ胚子の胚外体腔に5-FUを適用して生じる肢奇形の異常発生過程についても形態計測,組織化学により検索した。5-FUはマウス後肢,ニワトリ脚に軸前性多指を誘発する。5-FU適用ニワトリ肢芽でAERの幅を計測したところ、AER発達のピーク時には対照に比べて30%の増加を示した。VAはマウスに肢減形成を、MAAはマウスに短指,欠指,合指,時に多指など多彩な奇形を誘発する。MAA投与を受けたマウス肢芽では、AERは低形成を示すものが多かった。MAAによる異常細胞死の分布には個体差が多かった。異常発生過程におけるフィブロネクチン及びラミニンの分布は、5-FU及びVA投与を受けた肢について検索したが、異常発生と特に関連した変化は認められなかった。
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