研究概要 |
研究目的:本研究は, 従来, 串田らが開発した準超薄切片法を精巣組織に応用し, 同一切片上における光学顕微鏡と電子顕微鏡との対比観察および200kV透過電子顕微鏡による三次元的解析を行ったものである. その結果, 精子発生過程において, いわゆる厚みの効果による, 多数の知見を得ることができた. 研究方法:試料は, 生後1日齢から成熟期にいたるマウス精巣を使用した. 固定法は, 対比観察には4%グルタールアルデヒドと1%フオルムアルデヒドとの混合緩衝液を, 電顕的観察は2%オスミウム酸または2.5%グルタールアルデヒドと2%オスミウム酸との二重固定を行った. その後, 2.5%酢酸ウラニルによるブロック染色を施した. 包埋と著者らの開発したHPMA-Quetol 523-MMA混合液(65:10:25)およびQuetol 812-NSA包埋法を行った. ガラスナイフを用い, 0.5〜1.0umの比較的厚い準超薄切片を作製した. 光顕的染色はグリット上に載物した切片に対し行い, 光顕的観察, 写真撮影する. その後, 同一切片に対し, オスミウム酸染色を施し, 200kVの加速電圧をもって電顕的対比観察あるいは対応観察を行った. 電顕的観察条件は×1800〜×3000程度が至適であった. なお, 立体観察のためにはサイドエントリー傾斜装置(傾斜角±10°)を使用した. 観察結果:精子発生過程における各段階の精細胞, セルトリー細胞および間細胞において, 細胞内小器官, 細胞内結合構造やグリコーゲンの消長などについて, 従来の光学顕微鏡では解像が悪く, 超薄切片による電子顕微鏡的観察では認め難かった諸構造が確認できた. たとえば精子中間部のミトコンドリア鞘の三次元解析を行ったところ軸糸をとりまくミトコンドリアはつねに4個であり, その二重ラセン構造が規則正しい角度をもって配列することなどを証明した.
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