研究概要 |
視床下部から延髄縫線核,特に淡蒼縫線核,への投射をオートラジオグラフィー法,HRP法,蛍光二重標識法により検討した。オートラジオグラム作製後、淡蒼縫線核上に表われる銀粒子の数を各例で比較したところ【^3H】-ロイシンが背側視床下野に注入された例で最大であった。このことから背側視床下野に始まり淡蒼縫線核に終る強力な投射系が存在することが分った。背側視床下野には脊髄投射ニューロンがすでに知られているので、淡蒼縫線核投射ニューロンとの違いを知る必要がある。そこでHRPを淡蒼縫線核あるいは脊髄に注入し、それぞれの例で逆行性に標識された背側視床下野ニューロンの分布と形態とを比較した。淡蒼縫線核投射ニューロンは小型(6〜13×9〜22μm),卵円形で背側視床下野の腹内側部に明瞭な陽性細胞の集団として出現した。一方、脊髄投射ニューロンはより大型(9〜22×11〜36μm),卵円形ないし三角形で背側視床下野の背外側部に出現した。すなわち淡蒼縫線核投射ニューロンと脊髄投射ニューロンとは基本的に異なるものであろうと考えられた。同一個体でこのことを確認するために、Fast BlueないしTrue Blueを淡蒼縫線核に,Nuclear Yellowを頚髄下部に注入し、そののち蛍光顕微鏡で観察すると、逆行性に標識された青色蛍光を示す淡蒼縫線核投射ニューロンが背側視床下野の腹内側部に、また脊髄投射ニューロンが黄色蛍光を発して背側視床下野の背外側部に観察することが出来、HRPの所見を追認することが出来た。背側視床下野を両側性に電気凝固により破壊した例では、淡蒼縫線核に変性終末像が観察された。以上の結果は背側視床下野の腹内側部に存在するニューロンの特定の集団が単シナプス性に淡蒼縫線核に投射しているとの結論を得ることが出来た。さらにPHA-L法やイボテン酸による破壊等を行い、この新しい神経回路の確認をする必要がある。
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