研究概要 |
種々の高分子化合物の架橋による赤血球集合体形成や速度をビデオカメラ, 画像処理装置およびコンピューターを装着したオスコープ(ずり応力および温度可変調節)で測定した. 1.系の物理化学的条件:(1)pHを増すと集合体形成速度は増加する. アルカリ性pHでの集合体はずり応力でこわれ難い. (2)温度を上昇させると集合体形成速度は増すが, 血漿中での集合体形成は15°C以下を著しく促進される. フィブリノーゲンとIgGによる集合体の形態は20°C以上で異なる. (3)浸透圧を増すと集合体形成速度は増加するが, 400mOsm以上では減少する. 2.分子量の大きい高分子ほど集合体は形成されやすいが, その有効濃度は分子種により異なる. 3.IgGによる赤血球集合はアルブミンにより抑制されるが, フィブリノーゲンによるものはアルブミンにより促進される. 4.フィブリノーゲンは主にAα鎖C末端領域(残基No.207-303), 部分的にはγ鎖のC末端領域(残基No.375-411)で赤血球問を架橋している. 5.プラスミンによるフィブリノーゲン分解物(FDP)ではフィブリノーゲン>フラグメントX>フラグメントYの順に集合体を作りやすい. フラグメントDおよびEは集合体を形成しない. 6.赤血球集合にあたり高分子化合物は赤血球表面の特定の部位に結合していることがデキストランとポリグルタミン酸による赤血球集合の結果から示唆された. 7.赤血球表面の糖タンパクはそのシアル酸とともに赤血球集合に抑制的に作用している. 8.免疫グロブリン製剤と代用血漿の影響:(1)免疫グロブリン製剤ではその組成(時に各種酵素分解物), 血液型による赤血球と製剤との相互作用の差, 抗Aおよび抗B凝集素の混在, に注意を要する. (2)代用血漿ではグルコースの添加は赤血球集合を抑制する上で効果的である.
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