研究概要 |
1.β-シトリル-L-グルタミン酸(β-CG)の神経栄養あるいは突起伸展作用を、孵卵7〜10日目のニワトリ大脳,小脳,視葉および毛様体神経節細胞を用いて検討した。 1)β-CGは毛様体神経節細胞には、生存因子および突起伸展因子作用のいずれも認められず、本化合物は末梢神経細胞には効果がないと考えられる。 2)β-CGは、大脳,小脳および視葉の培養中枢神経細胞のいずれにも生存因子作用が認められたが、視葉の細胞に最も大きな効果が認められ、このことはin viroでの胎生期の視葉に最も高濃度のβ-CGが存在することと一致する。 3)β-CGは、視葉の培養神経細胞に対して、濃度依存的(20〜200μM)に生存細胞数および突起保有細胞数を増加させ、その両効果の割合はほぼ一致していた。 2.視葉の培養神経細胞の発達過程において、β-CG含量は培養日数とともに著しく増加し、培養6日目に最高値に達し、その後減少した。この変化は、in vivoで視葉で見られる変化に非常によく類似しており、β-CGの神経細胞の成長・分化に対する作用を、培養神経細胞を用いて研究できることが示唆された。 3.β-CGの分解酵素活性をニワトリ胚のin vivoでの発達過程でしらべたところ、視葉および大脳の成長・分化とともに著しく上昇した。この酵素活性上昇が、β-CG含量の減少に寄与しているものと考えられる。 4.ラット睾丸より、β-CG分解酵素を電気泳動的に単一にまで精製し、分子量18万の、酸性糖蛋白であることがわかり、またDNAとも親和性をもつことを明らかにした。この知見は、今後β-CGの生理的役割の解明に大いに役立つと考えられる。
|