研究概要 |
ショウジョウバエの脳と胸部神経節の培養神経細胞膜をexcisionして,insideout patch-voltage champ法を適用した。その結果、単一コンダクタンスやキネティックスが異なる2つのClチャンネル電流と遅延整流性単一Kチャンネル電流を、高頻度で観察することができた。単一Naチャンネル電流は効率よく測定できず、これは膜のNaチャンネル密度が低いことに帰因すると考えて、この研究は他の機会に譲った。ここでは、(1)1つのタイプのClチャンネルが、通常のpH緩衝液であるHEPES bufferで遮断されるという新知見を得たのでこれについて述べ、次に、(2)遅延整流性単一Kチャンネル動態の解析と、突然変異eagの作用について述べる。(1)膜を過分極すると、バースト状に出現し低い単一コンダクタンス(8pS)を示すCl電流の他に、大きな単一コンダクタンス(35pS)を示しほとんど開きぱなしで、時々短い閉状態を示すClチャネルが出現する。後者のチャンネルは、通常開状態と閉状態の2状態しか示さないが、細胞内をHEPESやMOPSというpiperazine環を有する陰イオン性のbufferで灌流すると、2状態の中間に多数のsubconductancl statesが生じた。このことから、HEPESやMOPSはClチャンネルのopen channel blgkerとして作用することが明らかになり、このClチャンネルが多数のprotochannelからできていることが示唆された。(2)遅延整流性単一Kチャンネルのコンダクタンス(20pS)、その【Q_(10)】値(1.49)、透過イオン間の接線コンダクタンス比K(1)>【NH_4】(0.48)>Rb(0.38)>Na(0.34)を求めた。open time histogramは単一の指数関数で表わされ、closed time histogramは3つの指数関数で近似された。これから、ショウジョウバエ遅延整流性Kチャンネルに対し、3閉状態、1開状態のsequential activation schemeを提案し、その遷移確率の膜電位依存性を求めた。突然変異種eag(筋の遅延整流Kチャンネルに異常をもつと考えられている)を用いてチャンネル特性を調べたら、正常種と変化がなかった。
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