研究概要 |
〔目的〕同一平面内にある左右半規管相互間で抑制性神経機構がある。この交連抑制は、頭の角加速刺激に対する前庭神経核中継細胞の反応の感度を高める働きをすると同時に、片側迷路破壊のいわゆる中枢性代償の主体をなしている。3つの半規管系について交連抑制のかかり方をみると、前半規管,後半規管あるいは水平半規管入力をうける中継ニューロンは、それぞれ反対側の後半規管,前半規管又は水平半規管刺激によって抑制される。しかし、この前庭核中継ニューロンの軸索投射様式が不明であった。そこで前庭動眼反射にかかわる中継細胞にかぎって交連抑制のかかり方を調べた。 〔方法〕麻酔ネコを使用した。眼窩内で必要な外眼筋支配神経を双極性に刺激し、外眼筋運動ニューロンプールを逆行性に同定し、その部位に金属電極を固定した。左右前・後半規管神経を合計4本、100μステンレス線をはり合わせた電極で刺激した。記録した前庭核ニューロンはFast Green FCFを満した2MNaclガラス微小電極で記録した。 〔結果・考察〕前半規管入力を受け軸索を対側下斜筋運動ニューロンプールに送る興奮性前庭核中継細胞は、内側核と下核にあり対側のMLFを上行する群、と上核にあり深部網様体を通る2群に分かれる。前後者ともそれぞれ大部分(32/36:89%)と(20/23:87%)が対側の後半規管神経刺激によって抑制を受けた。前半規管入力を受け同側の滑車神経核に軸索を送る抑制前庭核中継細胞も上核にある。この抑制性前庭動眼細胞の内わずか9%(3/35)だけが交連抑制を受けた。一方後半規管入力を受ける興奮性・抑制性前庭動眼細胞全てが対側の前半規管神経刺激によって抑制を受けた。前半規管入力を受ける抑制性中継ニューロンだけがなぜ交連抑制を受けないかについて現在十分説明が出来ない。小脳片葉からも抑制性機構に差があると見られるので、両機構を統合して考えるために現在実験中である。
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