研究概要 |
腎臓は、血圧調節に大きな役割を持つとされているが、腎神経を介する血圧調節についての研究はない。本研究では、腎求心性神経を介する血圧調節について正常血圧ラット(SD,WKY)および自然発症高血圧ラット(SHR)で検討した。 (方法)15週齢のWKY,SHRおよびSDラットをペントバルビタール麻酔下で腹部正中切開により左腎臓を露出し、腎動・静脈間を走行する腎神経を遊離させた。腎神経を切断し、その中枢端を電気刺激したときの血圧変化および末梢端に装着した電極からの腎求心性神経活動を記録した。 (結果および考察)1.腎求心性神経刺激時の血圧変動:WKY,SHRでは、刺激頻度(1〜20Hz)依存的に血圧下降が認められた。低頻度刺激(1〜2Hz)での降圧は、WKYに比べSHRで有意に低下していた。これら血圧変化は、迷走神経切断では全く影響されなかったが、C4,T8レベルでの脊髄切断により完全に消失した。L2レベルでの切断では抑制されなかったことから、腎求心性神経細胞はT9〜L1の間に存在することが推測される。SDラットで同様の実験を行うと、逆に、心拍数の増加を伴う血圧上昇があった。最近、本研究結果と同様の2方向の血圧変化が報告されており、種差、実験条件、麻酔等についての検討が迫られている。2.腎求心性神経活動:無刺激時では腎求心性神経活動はノイズと分離記録できなかった。腎静脈圧上昇で神経活動は増加したが、静脈圧上昇と同程度の輸尿管圧上昇では求心性神経活動が記録されなかった。以上、腎組織圧上昇による圧受容体刺激とは考え難く、腎内静脈系に圧受容体が存在するものと考えられる。WKYとSHRの間に上記反応に差が認められなかったことから、腎内圧受容体の機能にはWKYとSHRの間に差がなく、中枢神経機能の関与、圧受容体反応のresettingが示唆される。
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