研究概要 |
平滑筋細胞を酵素処理により単離し、膜電流を直接記録し、その性質を解析した。単離したウサギ門脈平滑筋細胞を用いてパッチクランプを行い、単一チャンネル電流を記録し、コンダクタンスの違いにより3種類のチャンネル(【K_L】【K_m】【K_s】)に分類することができた。これらは3種類ともK選択性を有し、このうち【K_L】と【K_S】は細胞内側のCa濃度と膜電位に依存して活性化され、いわゆるCa依存性Kチャンネルであると推定できた。【K_m】は10μM以上の細胞内Ca濃度で活性化され、また細胞外Ca濃度を現象させることにより抑制され、正常な細胞外Ca濃度条件では電位依存性を示さず、従来のCa依存性Kチャンネルとは性質を異にしていた。有機Ca拮抗薬はこれらのKチャンネルに対しては無効であったが、MgやBa等の2価イオンは【K_L】チャンネルに対して抑制作用を示した。しかしMgはみかけ上の単一チャンネルコンダクタンスを抑制させるのに対し、Baは開口頻度を減少させるように働き、その抑制様式は2種の2価イオンで異なっていた。それゆえ高濃度の有機Ca拮抗薬による膜脱分極はこうしたCa依存性のチャンネルの抑制にはよらないと推論した。そこで有機Ca拮抗薬(ニカルジピン,ベラパミル,ディルチアゼム)の作用を記録検討するため巨視的電流に対する作用を検討した。これらのCa拮抗薬は脱分極刺激によって発生させた内向き電流を抑制し、その強さはニカルジピン>ベラパミル≒ディルチアゼムの順であった。薬物投与による時間経過はニカルジピンが最も早く、ベラパミルの作用発現は刺激頻度や刺激回数に依存する抑制を示した。これらのCa拮抗薬の作用点は細胞内灌流法により薬物を細胞内から投与しても抑制が認められないことから、チャンネル外側より作用すると考えられた。これらのことから、Ca拮抗薬の膜電流に対する抑制作用は薬物により異なり、また平滑筋のCaチャンネルの性質は他の細胞とは異なることが本研究により明かにできた。
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