研究概要 |
1.ラット肝グリシンメチラーゼのN末端はブロックされていたので、種々のプロテアーゼでタンパクを切断後、N末端を含むペプチドを高速液体クロマトグラフ(HPLC)等で分離した。次に、それをエドマン分解,HPLC,マススペクトル等で分析したところ、N末端の配列は下記の如く決定された。アセチルVal-Asp-Ser-Val-Tyr-Arg-CooH。 2.先に分離した本酵素のcDNAをプローブとして、フルレングスのCDNA(1000塩基対bp)を入gtいにbraryより得た。サンガー法で塩基配列を決定したところ、翻訳可能領域のアミノ配列のうち、N末端,C末端付近の配列とも化学分析より得られた結果と一致していた。またアミノ酸組成、ペプチドマップもほぼ完全に一致していた。故にグリシンメチラーゼの完全一次構造が決定されたことになる。 3.完全長のCDNAをプローブとして、ラット肝の遺伝子をもつ入ファージCharon4A Libraryから本酵素の遺伝子をプラーク・ハイブリジィゼーション法にて5クローンを分離した。得られたクローンはいずれも6500bpの大きを有していたので、サンガー法でその塩基配列を決定した。遺伝子は6個のエクソンと5個のイントロンからなり、CDNAとは3個所で塩基の不一致があったが、これはアミノ酸配列には影響がなかった。5'プロモーター領域はTATA,CAT,GCボックス,及びエンハンサーコアエレメントに相補的な配列からなっていた。また転写開始部位は、Slマッピング・プライマーエクステンション法から、最初のATGコードンの上流19塩基に位置するアデニン残基と推定された。 このようにして得られた遺伝子は、本酵素の組織特異的形質発現の機構を解明するために有用と考えられる。
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