1.ヒトカタラーゼ遺伝子の高感度分析のためのプローブを作成する目的で、ヒト胎盤cDNAライブラリーより、カタラーゼcDNAを単離した。 2.日本型無カタラーゼ血症が遺伝子の大規模な構造変化を伴うものかどうかを調べるため、正常人と患者のDNAについてサザンブロッティングを行なった。3種類の制限酵素を用いて解析したところ、両者のDNAは全く同一のパターンを与えた。したがって本症はカタラーゼ遺伝子の大規模な欠失や再配列によるものではないと考えられる。 3.変異の実体を塩基配列のレベルで明らかにするため、患者DNAより遺伝子ライブラリーを作成し、カタラーゼ遺伝子を単離した。エクソンおよびエクソンとイントロンの境界付近、さらに5'上流域の塩基配列を解析し、すでに報告されている正常カタラーゼ遺伝子の塩基配列と比較したところ、現在までに4個所の塩基置換が確認できた。そのうち特に注目される2個所は、転写開始点上流22塩基目と、第4イントロンの5塩基目である。前者はプロモーター変異、後者はスプライシングシグナルの変異となっている可能性がある。 4.上記プロモーター変異の可能性を探るため正常8検体と患者のDNAのサザンブロッティングを行なった。この変異によってHionfIの切断部位がひとつ消失するので、これが病因であるならば患者に特有のバンドが出現するはずであるが、実験の結果は否定的であった。しかしこの実験で高頻度の多型性が見つかった。このことは今後、家系調査その他の目的に利用できるであろう。 5.今後、変異遺伝子の構造解析を完成させて病因となっている変異の実体を推定すると共に、機能解析によって本症の発症メカニズムを解明したい。
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