研究概要 |
〈目的〉ヒト正常肺と線維化肺組織上のタイプ別コラーゲンの増減局在を明らかにすることで、肺における基礎的な線維化機序を解明したいと考え、以下の実験をおこなった。〈方法〉剖検により得られた正常肺8例と線維化肺組織3例の新鮮材料を未固定のままクリオスタットで10μに薄切し、スライドグラスにはりつけ、ペプシン処理、コラーゲンを可溶化し抽出後、その抽出液をDEAEセルロースクロマトグラフィーでタイプ別コラーゲンを分離した。この操作の前後で、肺組織のEvG,Ag,Masson染色、また抗タイプ別コラーゲン抗体、抗タイプI、抗タイプIIIと抗タイプIV抗体を用いてABC法による酵素抗体法を行い、コラーゲン成分の消失と残存を観察した。また、生材料そのままを30-50グラム、ホモゲナイズ後上記と同様に可溶化してタイプ別コラーゲンを定量した。 〈結果〉おおよそのα|(|||)/α|(|)は正常例で0.1線維化肺例で0.8ほどであった。抗コラーゲン抗体を用いてPAP法により、上記の結果を確認したが、線維化肺ではタイプ|||の抗体のものの法がより強く染色された。出現する細胞成分の種類と増減について線維肺組織では、リンパ球,マクロファージ,線維芽細胞,平滑筋細胞等が増加しているが、場所によるバラツキが大きいこと、光学顕微鏡のみでは同定の困難な細胞が結構あることがわかった。上記の研究を進めるにあたり、画像解析装置を本研究費で購入することができ、ゲル電気泳動のパターン、細胞動態の解析に極めて能率をはかることができた。〈考察〉スライドグラスにはりつけた肺組織が、酵素処理ではがれることが多くあり、この点の対策を講じないと能率がわるい。また、症例数を増やしつつ、タイプ別コラーゲンの定量をしっかりしたデータとし、これに関与する細胞の役割を明らかにして、肺における線維化の基本的機序を解明したいと考えている。
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