研究概要 |
ランゲルハンス細胞(以下細胞と略す)の特性については最近かなり明確にされてきている。我々も従来より種々の検索を重ね、特にTリンパ球との関連性について報告してきた。この2年間では主に次2点について検討した。 1.ラ細胞と扁平上皮との関連性:ラ細胞は通常皮膚表皮内に存在するものであるが、食道、子宮頚部等の粘膜扁平上皮内にも存在する。そこで病的組織の扁平上皮内におけるラ細胞について検討を加えた。卵巣のdermoid cyst、皮膚真皮・皮下組織のepidermal cyst扁平上皮内に存在し、形態学的、免疫学的特性は全く皮膚ラ細胞と同様であった。肺・食道・子宮頚部扁平上皮癌及び膀胱・胆嚢の扁平上皮癌についても検索した所、角化傾向を示す高分化型扁平上皮癌ほどラ細胞の出現頻度が高かった。しかし分布状態は正常表皮内に比べ癌胞巣内ではばらつきが強かった。肺腺癌,膀胱移行上皮癌,胆嚢腺癌の癌胞巣内には認められなかった。ラ細胞が扁平上皮と密接な関連性を有することを示唆する所見であるが、今後扁平上皮細胞とのco-culture等により検索を進めて行く予定である。 2.ヌードマウスにおけるラ細胞:Tリンパ球と緊密な関連性を有していることから、Tリンパ球の存在しないヌードマウスにおけるラ細胞を検討した。表皮内においては分布、形態等に全く差異はみられなかった。しかし真皮にはかなり頻繁に認められ、リンパ節においてはT領域に相当する部位はリンパ球が少なく、大部分がラ細胞ないしBirbeck顆粒は有していないが同様の形態像,免疫学的特性を有しているinterdigitating reticulum cellで占められていた。これらの部位は通常はTリンパ球の存在部位であり、ラ細胞がTリンパ球の役割の一端を担っている可能性と、真皮内リンパ管内,リンパ節辺縁洞にも存在していることから、Tリンパ球を探し求めて生格各所を巡回している可能性を考えた。又ラ細胞の起源についての論証を得るべく検索中である。
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