研究概要 |
A.組織球性病変について 1.ヒト悪性線維性組織球腫(MFH)の新鮮材料から培養細胞系を樹立し, 各種のマーカーを調べたところ, 豊富なライソソーム酵素, Fcリセプターおよび免疫貧食能を有していることが分かった. 2.前記の組織球性細胞系を免疫原としてハイブリドーマ法によって, モノクローナル抗体FU3, FU4, FU5およびFU6を作製した. 3.免疫組織化学的に検索すると, モノクローナル抗体FU3は血管周囲間葉系細胞および線維芽細胞と反応したが, 単球, 顆粒球およびマクロファージとは反応しなかった. FU5およびFU6は細胞間質の細網線維および膠原線維と反応した. 4.電顕酵素抗体法によって抗原の局在を調べると, FU3とFU4は細胞膜表面に反応し, FU5とFU6は間質の線維を認識した. 5.免疫沈降法およびSDS-PAGE法によって, 抗原を分析すると, FU3は高分子領域の蛋白質と反応し, FU4は高分子領域以外に53kdの蛋白をも認識することが分かった. 6.結論:これらの結果から, MFH細胞は組織球マーカーを発現するにもかかわらず, 血管周囲細胞, および線維芽細胞と共通の抗原性を有することが明らかになった. 従って軟部の組織球性病変を構成する細胞の少なくとも一部はこれらの細胞, 特に多潜能性を有する血管周囲細胞に由来すると考えられる. B.軟部組織の筋線維芽細胞について 筋線維芽細胞の中間フィラメントはビメンチンで構成され, デスミンは陰性であった. すなわち本細胞は線維芽細胞と同様のパターンを示し, 平滑筋とは異なることが明らかになった.
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