研究概要 |
1.北海道産沿岸魚チカ由来裂頭条虫とフィンランド産D.ditremum(Crep in,1825) について形態学的ないしは生物学的特徴を比較検討した結果、特に走査電顕による虫体及び虫卵の構造が著しく異なり、チカ由来裂頭条虫は、淡水性D.ditremumとは異なる海水性裂頭条虫であると考える。 2.日本における人体寄生裂頭条虫で従来から広節裂頭条虫D.latumとされていたものと、北欧原産の近似種4種D.dendriticum,D.ditremum,D.latum,D.vogeliと形態学的、生物学的比較を行ない、走査電顕、透過電顕の観察結果も含めて同定基準を体系的に整理した。その結果、日本で明治以来、広節裂頭条虫とされていたものは別種であり、日本海裂頭条虫D.nihonkaienseと命名した。 3.裂頭条虫類各種の含有する微量元素,アミノ酸,脂肪酸の分析を行なった。微量元素については従来あまり研究されていなかったが、本研究により、Ca,Cu,Cd,Mg,Mn,Zn,Fe,Na,Kなどを検出し、宿主-寄生虫の相互関係における意義を考察した。また、条虫に特有な石灰小体成分について、その微細構造とともにX線分析を行ない、Mg,Ca,P,S,Naの含有を明らかにした。 4.島根県における人体寄生条虫症の疫学調査を行ない、広節裂頭条虫4例、大複殖門条虫1例,マンソン裂頭条虫孤虫症1例が発見された。山陰地方および四国地方に多い大複殖門条虫は、その感染源である魚種が未だ明らかにされず、予防医学上問題となっているため、今後継続して地域における疫学調査及び実験室内における感染魚種の検索を行なう予定である。
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