研究概要 |
マンソン裂頭条虫擬充尾虫感染によって生ずる宿主の成長促進の発現機序を明らかにするために虫体抽出液及び虫体培養液中から成長促進因子の精製を行なった. 1.本虫の虫体抽出液はヒト成長ホルモン(hGH)のラジオリセプターアッセイ(RRA)において, 受容体に対してhGHと競合置換し抽出液中にGH様活性が検出された. 2.hGH-RRAによるGH様活性を指標として虫体抽出液からGH様物質を各種クロマトグラフィーを用いて精製した. 精製GH様物質はSDS-PAGEにて26KDの分子量を持つ蛋白であり, 糖鎖を持ことが推察された. 3.本虫の培養上清中にもGH-RRAでGH様活性が検出され, 同様に精製したところSDS-PAGEにて27KDの分子量を持ち, ほぼ抽出液中から精製されたものと同じであった. 4.27KDのGH様物質は, 3T3細胞転換脂肪のリポ蛋白リパーゼ活性を抑制した. 5.本物質の宿主の糖質, 脂質代謝, 甲状腺ホルモン, 肝細胞DNA合成能に及ぼす影響を観察した(精製量が微量であり感染実験で観察した). (1)本虫の感染はゴールデンハムスターの糖質代謝において末梢組織での糖利用を亢進することによって血糖値を低下させた. (2)マウスの脂質代謝においてリポ蛋白リパーゼを抑制することにより高脂血症を引起した. (3)甲状腺刺激ホルモンを抑制することにより, サイロキシン, サイロキシン結合グロブリンを抑制した. (4)Thymidine Kinase活性を亢進させることにより肝細胞DNA合成を促進した. 6.今後の課題:精製GH様物質の生理学的作用及び分子生物学的研究により, hGHとの対比において本物質の特性を明らかにする. さらに, 治療薬としての可能性を追求する.
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