研究概要 |
ランブル鞭毛虫の感染によって脂肪便の排出が起こる。そこで、この原虫と生息環境の脂質との関連性を明らかにするため、培養虫体の脂質組成と培地中の脂質との関係を観察した。培養虫体と培養の前後のおける培地とからFolchの方法で脂質を抽出し、その重量を比較した。培養前後における脂質重量に差はみられなかった。培地中の脂質を中性脂質とリン脂質とに分画し定量を行なった場合、その組成比にも大きな変動はみられなかった。次いで、bovineまたはporcine bileの影響を観察した。bileの加えられた培地の培養後の脂質重量に僅かな減少が認められた。特にporcine bileを加えた場合にその減少が著しかった。bile添加によって培地中の脂質利用が促進されたと考えられる結果である。また、bileの虫体および培地中の脂質組成に及ぼす影響を同様に観察した。虫体および培地中の中性脂質の組成比に対するbileの影響はみられなかった。リン脂質分画についても同様bileの影響はみられなかった。一方、培地及び虫体の全脂質の構成脂肪酸組成比をガスクロマトグラフィーを用いて調べた。虫体脂質の脂肪酸構成比は、培地中の脂肪酸構成とは異なっている。bileを培地へ加えた場合、虫体脂質の脂肪酸構成比に変化がみられた。特に、porcine bileの影響がより一層顕著であった。以上の結果からbileは虫体の構成脂肪酸の組成比、特にステアリン酸に影響を与えていることが明らかであった。bileは虫体の培地中の脂質の利用に影響を与えていると考えられる。また、bile中に含まれる各種胆汁酸のうち、chenodeoxycholic acid,cholic acid,desoxycholic acidなどの虫体増殖に及ぼす影響について観察した。その結果、chenodeoxycholic acidは増殖に阻害的に作用するが、他の但汁酸は殆ど影響が認められなかった。
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