研究概要 |
抗原性の互に異なる2種のヒトロタウィルス,Wa株(serotype1-subgroup【II】)及びHN126株(serotype2-subgroup【I】)をMA104細胞に高いm,o,i,で同時感染させ、serotype2抗血清の存在下(実験1)又はserotype1抗血清の存在下(実験2)で増殖して来た多数のクローンウィルスについて、serotype特異抗血清による中和反応及びsubgroup特異単クロン抗体によるELISA反応でスクリーニングを行った結果、未だ野外分離株では検出されたことのない組換え体ウィルスC116株(serotype1-subgroup【I】:実験1)及びC15株(serotype2-subgroup【II】:実験2)を得ることができた。この結果とポリアクリルアミドゲル電気泳動による組換え体ウィルスの11本のRNA分節の由来の検討、並びに本組換え体の抗血清の各serotypeのウィルスへの中和能の検討から、以下のことが明らかとなった。1)C116株の場合、serotype抗原を規定する2種のouter capsid蛋白VP3,VP7のそれぞれをcodeするRNA分節4及び9はいずれもWa株(serotype1)に由来する一方subgroup抗原を規定する蛋白VP6をcodeするRNA分節6はHN126株(subgrope【I】)に由来しており、これは従来より提唱されて来たserotype及びsubgroup抗原蛋白とRNA分節の対応関係と符号した。 2)C15株は、そのsubgroup抗原(VP6)をcodeするRNA分節6はWa株に由来し、serotype抗原のうちVP3をcodeするRNA分節4はWa株に、VP7をcodeする分節8(又は9)はHN126株に由来する珍しいserotype抗原のモザイクウィルスであることが判明した。本組換え体の抗血清がserotype1及び2ウィルスを共に中和したことは、今後のロタウィルスワクチン候補株としての組換え体ウィルスの有用性を示すものである。 本研究の成果は多様な抗原組成を有し、かつ新しいRNA組成を有する株の出現機序の理解に役立つと考えられる。
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