研究概要 |
騒音が低体重児発生もしくは奇形児出生頻度増加要因として作用する報告もみられるが、それに対して否定的観察もしくは見解もなされている。この不一致は、暴露条件内に騒音以外の要因の混在によることが1つの大きな原因となっていることを指摘できる。本研究においては撹乱要因をできるかぎり制御し、純粋に騒音影響を観察するために動物実験をおこなった。 ICRマウスを用い、妊娠7日に連続または断続騒音暴露する群,妊娠7〜12日に連続騒音暴露する群を設定した。また、カドミウムおよびトリパンブルーの催奇形物質投与をおこない、その条件に前述の騒音を重複させて暴露し、催奇形物質投与影響を騒音がいかに修飾するかについても検討した。胎仔の生死判定,着床数,生存胎仔数,胎仔性判別,胎仔重量,胎盤重量および肉眼的外表奇形の存否について観察した。 以下のような結論を得た。すなわち、妊娠7日における6時間の連続騒音および断続騒音暴露により奇形発生頻度の有意な増大がみられた。また、断続騒音暴露では低体重胎仔発生頻度は高まった。これは音強レベルの断続的変化に伴う驚愕反応の影響と考えられる。騒音による催奇形物質の作用の修飾には物質種差があり、均一影響ではない。すなわち、カドミウムの催奇形作用に対しては騒音暴露による修飾は認められなかったが、トリパンブルーの催奇形作用に対しては騒音暴露による修飾がみられた。また、トリパンブルー投与による異常事象発生頻度に対する騒音影響は促進もしくは抑制という単一内容ではなく、投与トリパンブルー濃度により騒音影響内容が異なった。すなわち、濃度が低い場合には異常事象の発生が不変、時には増加し、高い場合には減少した。
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