研究概要 |
1.研究目的:鉛の慢性暴露指標として有用な赤血球遊離プロトポルフィリン(FEP)値が女性労働者で男性より高いといわれている(Roels等1975)。昨年度の研究では農村健常者のFEP値に同様の性差が見られたが(P<0.05)、ラットを用いた実験では低濃度鉛投与群及び対照群で逆の性差が見られた。今年度はこれらのFEP性差の変動機序解明のため去勢雄ラットに対する女性ホルモンの影響をみた。 2.研究計画:(1)去勢雄ラットをA群(olive油投与),B群(estradiol50μg/kg・BW投与),C群(estradiol250μg/kg・BW投与),A群(Pb5mg/kgBW投与),B'群(estradiol 50μg/kg・BW及びPb5mg/Kg・BW投与),C'群(estradiol250μg/kg・BW及びPb5mg/kg・BW投与),D群(去勢せずolive油投与)の7群(各6匹)に分け、estradiolは隔日、計22回皮下投与、鉛は週1回計6回腹腔内投与し、2週毎にHt値,FEP,ALA-U,CP-Uを測定し、性差を見た。(2)農村地区健常者(n=157)の血中鉛(PbB)を測定し、FEP等の鉛暴露指標との相関々係を見た。 3.研究成果:(1)実験期間を通じて各対照群に比しestradiol投与による有意差は見られなかった。即ち対照群Aに比してB,C群に、又対照群A'に比してB',C'群にFEPの増加は見られなかった。(2)農村健常者ではPbBに対していずれの暴露指標も有意な相関を示さなかった。 4.研究の考察・反省:(1)高濃度estradiol投与のC,C'群では実験終期にやゝFEP増加の傾向が見られるので、実験期間の延長又は投与濃度の増加により再検討したい。更に今後progesteroneやtestosterone投与実験も追加したい。(2)人の場合、閉経期前後を考慮して例数を追加し、又可能な限り職業的鉛暴露女性の例数を集め、再検討したい。
|