研究概要 |
近年, 気管支喘息患者の有病率の増加が, 特に学童の疫学調査で示され, その原因の一つとして窒素酸化物への暴露の寄与が疑われている. 気管支喘息の基本的病態は気道過敏性と反応性の亢進であろう. そこで現実に人が暴露されうる濃度の0.5ppmNO_2にモルモットを4時間/日, 5日/週, 11週間暴露し, 10日毎に, ヒスタミン・エーロゾル吸入に対する気流抵抗の変化から気道反応性および過敏性を評価した. 気流抵抗測定はオシレーション法(香川:日衛誌21:424, 1967)で10秒毎に測定した. ヒスタミン・エーロゾルはBabinton社製のネブライザーに塩化ヒスタミンを生理的食塩水に溶解し, 0.0625, 0.125, 0.25, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0%の溶液を入れて, 発生させた. 気道反応性テストは気流抵抗を10秒毎に2分間測定し, 気流抵抗のBaselineを測定した後, 生理的食塩水エーロゾルを10呼吸させた後, 気流抵抗を10秒毎に2分間測定し, 次いで0.0625%のヒスタミン・エーロゾルを同様に吸入させた後気流抵抗を2分間測定し, 気流抵抗がBaselineの2倍以上になるまでヒスタミン濃度を順次増加していった. 成果は以下の通りであった. (1)NO_2暴露群の体重は暴露期間の増加に伴い, 濾過空気暴露群(コントロール)に比しやや低下傾向がみられた. (2)気流抵抗は体重の増加に伴い減少し体重が400〜500gになると一定値を示した. (3)気流抵抗がBaselineの倍以上になるのに要するヒスタミン濃度は, 暴露開始後32日頃までは増加し, その後63日頃まで減少し, その後再び増加した. 気流抵抗および気流抵抗がBaselineの倍以上になるヒスタミン濃度, またその時の気流抵抗のBaseline値に対する増加率は濾過空気暴露群とおよびNO_2暴露群で有意差を認めなかった. この条件下のNO_2暴露では, 有意な気道閉塞および気道過敏性と反応性の亢進は観察されなかった. なお0.15ppmO_3への同様の19週間暴露でも類似の成果がえられている.
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