研究概要 |
本年度は、ヒトの剖検例から得た皮膚から筋肉までが一連となっている組織を用い、ガスの経皮的な侵入の態様の検討を試みた。前年度と同様の方法で、フレオン22を20℃で24時間暴露した場合、皮膚では500μl/g、皮下脂肪織で一番高く、2000〜400μl/gと深部になるにしたがって低下し、筋肉では150μl/g以下で、深部になるにしたがって徐々に低下した。ガスの侵入が異なる性質の層を経て起る場合、均質な物質で起こる拡散のように、表面からの距離と時間の関数として、その濃度分布を表わすことができない。そこで、表面から0.1mm毎の分画を考え、それぞれの分画の濃度と拡散係数から、1秒間に起る両隣の分画への流出と両隣の分画からの流入を計算し、シミュレートした。このような、異なる性質の層を経てガスが侵入する場合の態様は、一番表層の部分の表面飽和濃度Csと各層の拡散係数Dによって左右されることが示唆され、皮下脂肪織と筋肉の拡散係数に、それぞれ、前年度の検討で得られた、5×【10^(-5)】【mm^2】/sec,5×【10^(-4)】【mm^2】/secを用い、皮膚のCsを1000μl/g,Dを3×【10^(-4)】【mm^2】/secををあてはめた場合に、実測の分布とほぼ一致した。皮膚のCsとDは、それぞれ、約1000μl/g,3×【10^(-4)】【mm^2】/secと推定されるが、正確にシミュレーションを行うためのCsとDの算出には、厚さ1cm程度の皮膚が必要であり、材料が手出困難であった。現在、ゼラチン,セルロース末,ラード等を混合して、皮膚の組成に似せ、40℃以下で固体である皮膚のモデルとなる材料の調製を検討している。
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