研究概要 |
リポイドネフローゼの発症の原因はいまだ不明である。毛細血管、特に腎糸球体基底膜の透過性亢進にはT細胞機能異常の関与が報告され、二種のリンホカインが関与していると推測されている。我々はこの透過性亢進を惹起する因子を分析するために、ヒトT細胞-T細胞融合法を用いて、リンホカインを産生させ、腎潅流系にてその因子を測定し、種々のリンホカインの測定を行った。 結果:(1)血管透過性因子の測定:ラット腎潅流系を用いて培養上清を投与したところ3、2,3の上清で尿蛋白の出現をみた。(2)インターロイキン【II】の測定MTHマウスIL-【II】依存性細胞株を用いて上清を加えたところ、【^3H】の取込みは対照に比して有意に低下した。(3)浮遊増殖性細胞株(Daudi,Raji,Molt3,K562)の増殖を有意に抑制した。(4)正常リンパ球の幼若化反応の増殖促進率は12時間目,24時間目,48時間目と増加し、正常の5〜10倍増強された。この現象は上清の濃度依存性であった。(5)上皮性腫瘍細胞株の増殖に対する影響は胃癌,胆のう癌,扁平上皮癌で培養上清高稀釈においても腫瘍細胞壊死効果が認められた。以上の因子は同一細胞上清中に認められたが、これらが単一細胞株に由来するか否かを検討するために阻界稀釈法を用いてクローニングを行った。3回のクローニング後得られた上清およびクローニング前上清を同様の系で測定したところ、上皮性腫瘍細胞に対して細胞毒性を示した上清はConA刺戟によるリンパ球増殖反応を促進した。しかしながらクローニング前後の培養上清ともにこれらの活性が時間とともに低下し、またハイブリドーマ細胞もリンホカインの産生が著しく低下した。以上の結果より、透過性亢進因子とリンパ球増殖促進因子等の解析、同定までには至らなかったが、これらの因子に何らかの関連があるものと考えられる。
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