研究概要 |
白血病細胞を表面マーカーによらず遺伝子発現の相違から分類することは白血病治療の新たな展望のため重要なことと考える。また、それらの種々白血病に特有に発現される遺伝子を用い細胞DNAの解析を加えることは、白血病の早期診断およびその病因解析において役立つものと考える。 そこで、白血病細胞の遺伝子発現を正常細胞と比較し、白血病細胞に強く発現される21個の遺伝子を分離し検討を行った。 実験はまず、白血病に特有に発現する遺伝子の分離のため慢性リンパ性白血病細胞の転写RNAよりcDNAライブラリーを作製した。ライブラリーは12000個のコロニーが得られた。白血病に強く発現される遺伝子はコロニー・ハイブリダイゼーション法およびドット・ハイブリダイゼーション法でスクリーニングされ、ヒト胎盤組織で発現されなく白血病細胞で発現される21個のクローンが分離された。これらの21個のクローンの各白血病細胞間での発現状態は培養細胞株(EBトランスホームB細胞,Molt3,Raji,CCRF-CEMおよびK-562)および患者末梢血液より分離したCLL細胞および悪性リンパ腫細胞を用い、ドット・ブロット・ハイブリダイゼーション法で行った。このうち20個のクローンでは各種白血病細胞に強く、正常リンパ球では弱く発現した。この結果をさらに明らかにするため、7-3G,6-1Eおよび9-5Cのクローンはノーザン・ブロッティングも行い、正常リンパ球および胃癌組織ではほとんど発現されなく、白血病細胞に特有に強く発現されることが解った。さらに、これらのクローンのうち7-2DはB細胞系腫瘍に、6-1GはRajiに、また6-1EはMolt3で強く発現された。このような遺伝子を各種白血病より多く分離し、それらの白血状態を図示することより、白血病細胞の新たな分類に使用でき、治療に応用できるものと確信する。
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