全身性エリテマトーデス(SLE)の発症には遺伝と環境の相互作用が関与していると考えられる。1981年宮川らはSLE患者の赤血球膜上の補体レセプター(CRI)活性が遺伝的に低下していることを報告し、CRI活性低下がSLE発症に関わる遺伝要因として注目された。一方CRI活性はSLEの疾患活動性などの後天的因子の影響を受けて変化するとの報告もあり、CRI活性低下の遺伝性についてはいまだに結論は出されていない。そこで、福岡集団におけるSLE患者とその家族および疾患の関与のない一般健常者について赤血球CRI活性を測定し、SLE発症の遺伝要因としてのCRI活性低下について検討した。対象および方法:当科に入院または外来通院中のSLE患者112例。健常者として福岡市内の某企業従業員162例および沖縄県与那国島、波照間島の住民685例、計847例。CRI活性は、免疫粘着血球凝集反応(IAHA)を用いて測定した。 結果および考察:CRI活性低下の頻度は、SLE患者で112例中73例(65%)一方、健常者では847例中77例(9.1%)であり、CRI活性低下のSLE発症に関する相対危険度は19であった。健常者25家系についてみると、同一家系内に複数のCRI活性低下例がみられ、その分布よりCRI活性低下が単純劣性形質であることが示唆された。SLE患者27家系についても大部分の家系で同様の遺伝性が示唆されたが、4家系では劣性遺伝子では説明できなった。一方SLE患者全例のCRI活性を最長2年2ケ月にわたって繰返し測定したところ22例(20%)にCRI活性の変動がみられた。 以上の結果より、SLE患者においてもCRI活性は基本的には遺伝的に規定されていると考えられるが、後天的因子の関与も示唆されることから、SLE患者におけるCRI活性低下に関して遺伝的異質性が考えられさらに検討を必要とする。
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